相続の基礎知識

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相続手続の流れ

相続開始後には、通夜、葬儀、法要、お香典返し、納骨、挨拶状作成など大切な仕事がたくさんあります。それらをひとつひとつこなすだけでも相当の気遣いと時間を費やすものですが、同時に相続手続きもしっかりとしていかなくてはいけません。相続手続には、各種さまざまな申請が必要になりますので、しっかりと把握することが何よりも重要です。

相続の流れ・注意点

相続手続の専門家とは

相続手続きのサポートを行える専門家(国家資格者)について説明したいと思います。どの国家資格者が、どんなサービスやサポートをしてくれるのか、ご存知ではない方も多いのではないでしょうか?各国家資格者の強みと、その仕事を下記にまとめましたのでご参考ください。

国家資格一覧表

国家資格 主要担当機関 主要業務・強み
行政書士 行政機関(県庁・市役所・町役場)
  • 公正証書・契約書作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 行政への届け出の代行
司法書士 法務局
  • 不動産(土地・建物)の登記・名義変更
  • 法務局への登記代行
  • 相続放棄等裁判所への申立の書類作成
弁護士 裁判所
  • 紛争やトラブルの調停・解決
  • 裁判所への申立代行
  • 裁判所での口頭弁論サポート
税理士 税務署
  • 税務全般のサポート
  • 税務署への申告代行

最初の手続き

死亡届を提出する

死亡後7日以内に医師の死亡診断書を添付して、該当する市区町村の長に提出します。死亡した日または死亡したことを知った日から7日以内に市区町村役場に「死亡届」を提出しなければなりません。(死亡届を提出しないと死体火葬許可証が発行されません)

通常、死亡診断書と死亡届は一緒になっていますので、病院で死亡診断書を作成してもらいましょう。(生命保険金等を受け取る際にも死亡診断書が必要です)死亡届が提出されると、戸籍に死亡の記事が記載され、住民票の記載も消除されます。
※死亡届は、「死亡者の本籍地/死亡地/届出人の住所地/届け人の所在地」の、いずれかの市町村役場に届出てください。

埋火葬するには、「埋・火葬許可証」が必要です。死亡届の手続きが終了すると許可が出るので、早めに死亡届を提出しましょう。

必要書類

期限のある手続き

相続発生後、一定期限までに様々な行政上の手続をする必要があります。ここでは、相続が発生した後、期限内に処理すべき手続きを解説したいと思います。死亡届、相続方法、所得税の準確定申告、相続税の申告などの主な手続きを見てみましょう。

7日以内にやらなければならないこと

死亡届の提出

死亡後7日以内に医師の死亡診断書を添付して、該当する市区町村の長に提出します。

3ヶ月以内にやらなければならないこと

相続放棄の申し出

相続人が、被相続人の財産及び債務を一切受け入れないことを「相続放棄」といいます。例えば、被相続人のマイナス財産がプラス財産よりも多い場合、「相続放棄」をすることによって負担を免れることができます。相続放棄は家庭裁判所に申し出ることが必要です。

限定承認の申し出

被相続人の財産をすべて無限に承継することを「単純承認」といい、これに対し、プラス財産の範囲内でマイナス財産を承継することを「限定承認」といいます。借金の額がその時点で把握できない場合に使います。これも家庭裁判所に申し出ることが必要です。

4ヶ月以内にやらなければならないこと

所得税準確定申告

不動産所得や事業所得など所得税の確定申告が必要な人は通常、翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告を行いますが、死亡した場合には、その年の1月1日から死亡日までの期間の所得を確定申告(準確定申告といいます)をしなければなりません。一年の途中で区切りをつけるということです。所轄の税務署に申告します。この申告は相続人全員が納税者となり、被相続人の所得税の申告を行う義務があります。

10ヶ月以内にやらなければならないこと

相続税の申告

被相続人の遺産に対して相続税がかかる場合には、相続開始を知った日から10ヶ月以内に相続人全員が相続税の申告をしなければなりません。相続人1人1人が実際に取得した財産に対して相続税が算出されるため、申告期限(10ヶ月)までに遺産分割協議が相続人間で整っていることが前提になります。原則的には遺産分割協議も10ヶ月以内という事になります。

相続税の納付

相続税を現金納付する場合は10ヶ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法である、延納(国に借金すること)や物納(物で納めること)も申告期限(10ヶ月)までに申請書を提出し、許可を受けなければなりません。

1年以内にやらなければならないこと

遺留分の減殺請求

民法では、法定相続人が必ず相続できるとされている最低限の相続分(=遺留分)が保証されています。万一、遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかったときには、遺留分を侵した相手に対して相続の開始から1年以内に「遺留分の減殺(げんさい)請求」を行うことで、これを取り戻すことができます。

3年10ヵ月以内にやらなければいけないこと

相続税の特例適用のための分割期限

相続税の軽減特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」「特定事業用資産の特例」の適用は、遺産分割協議が整っていることが適用要件となっているため、申告期限(10ヶ月)までに協議が整っていない場合には、適用しない内容での申告となります。その後、3年以内に協議が整えば、その時に特例を適用する申告内容に訂正することができます。相続財産を譲渡した場合の所得税の譲渡の特例(取得費加算)は、その譲渡が相続税の申告期限から3年以内に行われたときだけに限られています。


以上、期限のある手続きについてお話ししましたが、この全てを行うわけではありません。ただし、知らなかったでは済まされないのが、この期限のある手続きです!もしも、日程が迫っていても時間の調整がつかないという方がいましたら、すぐにお問い合わせください。

相続手続きのチェック表

手続きは、下記の一覧からご確認ください。

届出・手続き 説明 期限 手続き先
死亡届 「死亡診断書」とセットで提出 7日以内 亡くなった人の本籍地または届出人の住所地の市町村役場
死体火(埋)葬許可申請書 火葬・埋葬の許可をとるとき 7日以内
世帯主変更届 世帯主が死亡したとき 14日以内 住所地の市区町村役場
児童扶養手当認定請求書 世帯主が死亡して、母子家庭になったとき 世帯主変更届と同時 住所地または本籍地の市区町村役場
復氏届 配偶者の死亡後、旧姓に戻りたいとき 必要に応じて 住所地または本籍地の市区町村役場
姻族関係終了届 配偶者の死亡後、配偶者の親族と縁を切りたいとき 必要に応じて 住所地または本籍地の市区町村役場
子の氏変更許可申請書 配偶者の死亡後、子の姓と戸籍を変えたいとき 必要に応じて 子の住所地の家庭裁判所
改葬許可申立書 お墓を移転したいとき 必要に応じて 旧墓地の住所地の市区町村役場
相続放棄、限定承認の申立 債務を相続したくないとき 3ヶ月以内 亡くなった人の住所地の家庭裁判所
準確定申告 1月1日から死亡日までの所得を申告する 4ヶ月以内 亡くなった人の住所地の税務署
運転免許証 返却 速やかに 最寄の警察署
国民健康保険証 変更事項の書き換えをする 速やかに 住所地の市区町村役場
シルバーパス 返却 速やかに 住所地の市区町村役場
高齢者福祉サービス 利用登録の廃止 速やかに 住所地の福祉事務所
身体障害者手帳・愛の手帳など 返却(無料乗車券などがあれば一緒に返却) 速やかに 住所地の福祉事務所
相続税の申告 相続税を支払う場合 10ヶ月以内 亡くなった人の住所地の税務署
相続登記 不動産の名義変更 期限無し 不動産の管轄の法務局
遺留分減殺請求 遺留分を侵害された場合 原則、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から、1年間 相続人から受贈者へ

勤務先(在職中の場合)

届出・手続き 説明 期限 手続き先
死亡退職届 提出 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
身分証明書 返却 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
退職金 受け取る 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
最終給与 未支給分があれば受け取る 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
健康保険証 返却 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)

遺産相続の種類

相続するべき?しないべき?私は相続人?

相続には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。

限定初任と相続放棄

単純承認・相続放棄をする前の準備

  1. 被相続人の通帳、郵便物を徹底的に確認する
  2. 通帳類は銀行等で現預金残高を確認する
  3. 負債があるかの確認をする(借用書や金融機関から送られてきた請求書がないか等)

住宅ローンは「団体信用保険」が掛けられている場合には一般的に債務免除となります。ローンを組んだ銀行等に確認してください。どうみても債務が多い場合は相続放棄の申立をしましょう。
※借金は後から判明することも多いので注意してください

親に借金や債務保証が残っていそうな場合のチェックポイント

  • 借用書や、金融機関から送られてきた残高の通知書などを探す
  • 保証人になっていそうな取引先・金融機関、親が親しかった人に、借金があるか確認する

相続人調査と相続財産調査

相続人調査は、正式には戸籍謄本の収集と相続関係説明図の作成を通じて行います。おそらく、相続に直面した多くの方が一番始めにとまどってしまうのが、相続人調査であると思います。『親から子供へ』といった簡単な戸籍であればまだしも、相続においては複雑な戸籍を読み解いて相続関係を明確にし、そのうえで、銀行の預金や土地・建物の名義変更の申請を進めなくてはならない場合が多いからです。そして、財産調査について、最近では下記のような困りごとも少なくありません。

「被相続人とあまり面識が無かったので、相続財産がどれくらいあるのか分からない・・・」
「兄弟で仲が悪く、亡くなった両親と同居していた方が預金通帳を握っていて相続財産がどれくらいあるのか分からない・・・」
「相続人のひとりが、法要等の費用を理由に相続手続きを仕切ってしまい、どんな状況なのか、どれくらい財産があるのか分からない・・・」

こんな場合は、弁護士、司法書士、行政書士等の相続手続きのプロにご相談ください。どの専門家に依頼するかは、それぞれ事案や予算に応じて選択すると良いと思います。大まかに言うと、紛争性が高ければ弁護士、不動産があれば司法書士、不動産もなく紛争性もなければ行政書士に相談するのが良いでしょう。また、報酬についても、各専門家によって異なりますので、事情を話した上でまずは見積を取得するのが良さそうです。どこに相談して良いかわからない、そんな方は当事務所へご連絡下さい。まずは内容をお聞きした上で、当事務所で対応できない事案の場合も、提携の弁護士、行政書士をご紹介致します。

法定相続人について

誰が相続人となるのか

法律で定められた相続人のことを「法定相続人」といいます。では、法定相続人はどのような規定で決まるのでしょうか?誰が法定相続人になるかは民法の規定により確定します。民法では配偶者および被相続人との血縁の深い者を優先的に法定相続人とするように規定しています。具体的には一定の法則があり以下のようにして法定相続人を確定していきます。

第1順位 子 配偶者とともに常に法定相続人となります。
第2順位 父母 被相続人に子がいなかった場合に配偶者とともに法定相続人となります。
第3順位 兄弟姉妹 被相続人に子も父母もいなかった場合に配偶者とともに法定相続人となります。

例1)被相続人に妻(=配偶者)と子がおり、父母がいる場合

配偶者と子は常に法定相続人となります。父母は子がいるので法定相続人となりません。

例2)被相続人に妻はいるが子はおらず、父と弟がいる場合

配偶者は常に法定相続人となります。被相続人に子がいなかった場合なのでの父が法定相続人になります。なお、弟は父母がいるので法定相続人となりません。

例3)被相続人に妻はいるが子はおらず、父母がいないが弟がいる場合

配偶者は常に法定相続人となりますので法定相続人です。被相続人に子も父母もいないので弟が法定相続人になります。

例4)被相続人に妻、子はおらず、父と弟がいる場合

被相続人に子・妻・母・いなかった場合なので父が法定相続人です。弟は父がいるので法定相続人となりません。

少し特殊なケース

※被相続人に子はいるが養子である場合
養子は子と同じように扱われますので常に法定相続人になります。

※被相続人の妻が妊娠中である場合
民法では妻が妊娠中である場合に、生まれてくる子の権利を保護するために胎児を既に生まれた子と同じように扱っています。よって常に法定相続人になります。

代襲相続(孫、甥の場合)について

被相続人に子がいたが被相続人より先に亡くなっていた場合、その子の子(つまり孫)が相続人となります。これを代襲相続といい、孫を代襲相続人といいます。孫が代襲相続人の場合は子と同じように扱われますので常に法定相続人となります。また、兄弟姉妹が法定相続人であったが被相続人より先に亡くなっていた場合にも、その兄弟姉妹の子(つまり甥)が代襲相続人となります。甥は兄弟姉妹と同じように扱われますので被相続人に子も父母もいなかった場合には配偶者とともに法定相続人となります。

法定相続人としての資格を失う場合

民法は法定相続人となる者を定めていますが、その資格を失う場合も定めています。その制度には欠格と廃除の2つがあります。

欠格

相続の争いに関して被相続人を殺そうとしたり、遺言書を偽造したというような、社会的に相続人としてふさわしくない行動をとった場合には自動的に相続人としての資格を失います。これを欠格といいます。

廃除

相続欠格ほど犯罪性はないものの、被相続人が虐待や侮辱を受けたりした場合、被相続人が生前あるいは遺言で家庭裁判所に申し立てることにより、相続人としての資格を失わせることができます。これを廃除といいます。

相続税・相続財産とは

相続の手続きとして最も重要なことは、相続税がかかる財産を把握することです。相続税の対象となる財産は大きく、「1..本来の相続財産」、「2.生前の贈与財産」、「3.みなし相続財産」の3つに分類されます。

  1. 本来の相続財産
    相続人による遺産分割の対象となる財産のことです。
  2. 生前の贈与財産
    相続により財産を取得した者が、相続の開始日から3年以内に取得した被相続人からの贈与財産及び相続時精算課税の適用を受けた財産のことです。これらの財産はすでに被相続人の所有から外れていますが、相続税の計算上は本来の相続財産に上乗せします。
  3. みなし相続財産
    本来的に被相続人の財産ではないが、相続税の計算上はこれを相続財産とみなして、本来の相続財産に上乗せする財産のことです。死亡保険金、死亡退職金などがこの分類に属します。
相続財産にはどんなものがあるか教えて下さい

プラスに作用するもの

  • 土地・建物
  • 借地権・貸宅地
  • 現金・預貯金・有価証券(小切手・株券・国債・社債ほか)
  • 生命保険金・退職手当金・生命保険契約に関する権利
  • 貸付金・売掛金
  • 特許権・著作権
  • 貴金属・宝石・自転車・家具
  • ゴルフ会員権
  • 書画・骨董
  • 自社株など

マイナスに作用するもの

  • 借入金・買掛金
  • 未払の所得税・固定資産税・住民税等の公租公課
  • 預かり敷金・保証金
  • 未払の医療費

非課税財産

  • お墓・永代供養代金・香典・国などに寄付した財産
  • 生命保険金・退職手当金のうち一定額

みなし相続財産とは?

「みなし相続財産」とは、相続税の手続きにおいては被相続人の財産ではないにも関わらず相続財産として相続税の課税対象となる財産のことです。被相続人の死亡を原因として相続人に支払われる生命保険金や損害保険金などは、被相続人が生前から持っていた財産ではありませんので、民法上は相続財産として「遺産分割協議」の対象にはなりません。しかし、被相続人が保険料を負担していた契約については、相続税の計算をするときは、相続財産とみなされて相続財産に含めなければなりません。被相続人の死亡を原因として支払われる退職手当金も同様に「みなし相続財産」となります。

みなし財産

被相続人が死亡する前の3年間で贈与された財産 被相続人が死亡する直前に相続人に財産を贈与して節税しようとする行為を防止するための規定です。その節税行為を防ぐために、被相続人が死亡する3年以内に贈与された財産は相続財産(みなし相続財産)として扱われ、相続税の課税対象になります。
生命保険金 被相続人が死亡する直前に相続人を受取人に変更して相続税を節税しようとする行為を防止するための規定です。その節税行為を防ぐために、受取人が誰であっても被相続人が掛けていた生命保険は相続財産(みなし相続財産)として扱われ相続税の課税の対象となります。
死亡退職金 被相続人が受取人である場合の死亡退職金は被相続人の財産になりますので、当然通常の相続財産になります。しかし、被相続人が個人事業などを営んでいた場合に、被相続人が死亡する直前に相続人を受取人に変更して相続税を節税しようとする行為を防止するための規定になります。その節税行為を防ぐために、受取人が誰であっても被相続人の死亡退職金は相続財産(みなし相続財産)として扱われ、相続税の課税対象になります。
弔慰金 もともと弔慰金は非課税なのですが、非課税であることを利用して多額の弔慰金、葬儀料などが支払われるといった節税行為を防止するための規定です。その節税行為を防ぐために、相続人に対して支払われた多額な弔慰金、葬儀料などは相続財産(みなし相続財産)として扱われ、相続税の課税対象になります。

遺産分割協議(遺産分割の方法)

遺言により、各相続人の取得する財産が具体的に記されている場合を除いて、遺産分割協議により「①誰が、②どの財産を、③どの方法で、④どれだけ取得するか」について相続人全員で協議し、財産を分けることになります。遺産分割協議は、「遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と民法で定められています。

遺産分割協議に相続人全員が参加していなかった場合は、その遺産分割協議は無効となってしまいます。また、相続人が遺言で包括遺贈しているような場合は、包括受遺者も相続人と同様の地位とされますので、包括受遺者は協議に参加する必要があります。

遺産分割の種類

現物分割

一般的な方法で、遺産そのものを現物で分ける方法です。現物分割は、各相続人の相続相当分通りに分けることは困難なので、相続人間の取得格差が大きい場合には、その分を他の相続人に金銭で支払うなどして調整することになります(代償分割)

代償分割

相続分以上の財産を取得する場合において、その代償として他の相続人に金銭を支払う方法です。

換価分割

遺産を売却して金銭に変換した上で、その金額を分ける方法です。現物を分割してしまうと価値が低下する場合などはこの方法がとられます。この方法は、遺産を処分してしまうので、処分に要する費用や譲渡所得税などが、かかることがあるので注意が必要です。


遺産分割協議はあくまで、相続人間での任意の話し合いです。遺産分割協議をして法定相続分と違う分け方にすることもできます。また、遺言書があっても受遺者はそれを放棄し、遺産分割協議で配分割合を決定することもできます。つまり、相続人全員で協議し、全員が賛成すれば遺言や法定相続分に関係なく、財産をどのように分けても自由なのです。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は後に争いにならないように作成するものですから、記述内容は正確に記入しなければなりません。遺産分割の協議が成立したとき必ずしも作成する必要はありませんが(不動産の名義変更があるときは原則必要)、協議書を作成しておくと遺産分割協議の合意が相続人間できちんと成立したことを証明する有力な資料になります。

遺産分割協議書についての、作成のルールは特にありません。縦書きでも横書きでもかまいません。タイトルは「遺産分割協議書」「合意書」等どんな名称でもかまいません。誰の相続なのか被相続人の氏名、最後の住所、死亡年月日などで特定しますので、相続人の住所は住民票に記載されたとおりに書きます。

相続人全員の、印鑑登録された実印の押印が必要です。遺産分割協議書には印鑑証明書を添付するのが通例です。遺産分割協議書を作成する場合にはその合意の内容を具体的かつ正確に記載し、その真正を担保するために、当事者がそれぞれ署名または記名し、印鑑登録をした実印で押印します。協議書が2枚以上になる場合、それが1つの書面でありかつ、その順序で綴られたものであることを証明し、あとから、抜き差しできないように、両ページにまたがって契印を押します。遺産分割協議書は相続人の人数分作成するかまたは相続人の代表者が原本を保管し他の相続人はそのコピーを保管します。

遺産分割協議書記載例

遺産分割協議書
<被相続人の表示> 本籍 北海道○○
最後の住所 北海道○○
被相続人氏名 ●●●●
相続開始の日 年 月 日
<相続人の表示> 後記相続人署名欄記載のとおり
平成 年 月 日●●●●の死亡により共同相続人○○ ○○、△△△△、はつぎのとおり被相続人●●●●の遺産を相続した
1.相続人 ○○ ○○は次の遺産を取得する
(1)北海道○○
宅地 210㎡
(2)同所同番地 家屋番号9番
木造瓦葺2階建 居宅 床面積 130㎡
(3)上記居宅内にある家財一式
(4)有価証券
○○株式会社の株式2000株
(5)預金債権
○○銀行東京支店 普通預金 口座番号
2.相続人△△△△は次の遺産を取得する
○○銀行東京支店 定期預金 口座番号
3.上のとおり分割された遺産のほか、将来何らかの遺産が発見されたときは、当該遺産については相続人全員により別途協議を行うものとする。
以上のとおり協議が真正に成立したことを証するため、この遺産分割協議書3通を作成して、署名押印し、各自1通ずつを保有する。
平成 年 月 日
相続人 本籍 北海道○○
住所 北海道○○
相続人 本籍 東京都○○
住所 東京都○○
長男
相続人 本籍 東京都○○
住所 東京都○○
長女

遺産分割協議書作成後にあらたな相続財産が見つかったとき

遺産分割協議書作成後に新しく相続財産が見つかった場合にはあらかじめ誰が取得するかを決めておくことをおすすめします。取決めがない場合は、新たにその財産について分割協議をし、その財産についての遺産分割協議書を作成し、かつ前に行った分割協議は有効であることを相続人全員で確認する旨の条項を入れておきます。

銀行預金の名義変更

銀行預金は、銀行が預金者の死亡を知ってからは、一部相続人が勝手に預金を引き出せないように、預金の引き出しができなくなります。遺言があれば、その遺言で指定された人に支払われ、遺産分割協議が成立していれば、指定された相続人に支払われます。預金を解約したり、名義変更するためには一般に下記のような書類が必要になりますが、遺言、分割協議の有無や金融機関によっても違ってきます。

銀行が預金者の死亡を知った場合には、その預金は、相続人に対して支払われることになります。遺言が存在すれば、その遺言で指定された人に支払われ、相続人間で遺産分割協議が成立していれば、指定された相続人に支払われます。遺言がなく、遺産分割協議も成立していないときに、相続人の一人が預金について法定相続分(自分の分についてだけ)の払戻しを請求した場合、銀行では、遺産分割前に相続預金を支払うときの手続は、遺言がないことを確認し、相続人全員の連署のある書類を要求の上、取り扱うのが原則です。

などがその理由と言われています。

配偶者居住権とは(令和2年4月1日以降の相続について適用)

配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について、終身、配偶者に建物の使用を認める権利

要件

相続人となる配偶者が、「被相続人所有の建物」に、「相続開始時」、「居住」していたこと。
※被相続人が、建物を配偶者以外の者と共有していたときは、配偶者居住権は成立しません。

配偶者居住権の設定の方法

  1. 遺贈・死因贈与
    *原則、配偶者居住権は遺贈・死因贈与により取得させるものとしておりますので、遺言に「配偶者に配偶者居住権を相続させる」と記載した場合は、効力を生じない場合があります。専門家を介さず自筆証書遺言を作成する場合は、記載文言に注意が必要です。
  2. 遺産分割協議
  3. 遺産分割審判

存続期間

原則 終身

例外 遺産分割協議や遺言などで、終身以外の期間を定めたときは、その期間。但し、一定の期間(例えば10年間)を定めた場合でも、その期間満了前に配偶者が死亡したときは、配偶者居住権は消滅。

メリット

  • 配偶者の居住権が守られる。
  • 配偶者居住権と居住用不動産(負担付所有権)に分離して相続させることができる。
    例えば、従来は、遺産のうち、自宅の価値が法定相続分(2分の1)を超える場合、配偶者は預金等を一切相続できず、自宅を相続する(所有権を取得する)代わりに代償金を他の相続人に支払わざるを得なかった。このような場合、配偶者が配偶者居住権を取得し、居住用不動産(負担付所有権)を子が取得することで、配偶者にも預金を分配することができるようになる。
  • 配偶者居住権等の設定による相続税の負担軽減

デメリット

  • 配偶者居住権は売却することはできない。例えば、配偶者において、将来の生活費、施設への転居費用等について、自宅の売却資金をあてにすることができない。
  • 登記をしなければ第三者に対抗することができない。つまり、登記費用がかかる。

お困りごとは、私たちにご相談下さい。【初回のご相談無料】

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